推薦文

子どもの頃から漢字に親しんでいる日本人は理屈ぬきで漢字の意味を飲み込んでいるのですが、大人になってからはじめて漢字を学ぶ外国人は単純に記憶力に頼ろうとしてもなかなか難しいようです。アメリカ人宣教師である著者は、この漢字がどうしてこの意味を持つのか、という理屈を考え抜き、その結果としてこの本が生まれました。抽象的な観念を表す漢字がこういう形なのは、その漢字が中国で創出されたとき、そこに聖書の創世記に記された物語があったからだ、という著者の主張は、奇想天外なようでいて、しかしかなりの説得力を持っています。聖書が書かれたユダヤの地と中国は陸続きであり、同じ物語が双方で生れた、あるいは一方から他方に伝播した、と考える余地は十分にあります。日本人が日ごろあまり考えることのない漢字を読み解く試みの一つとして、知的な刺激に満ちたこの本は多くの人に読まれるべき価値があると信じます。
久世了（明治学院学院長）

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